補聴器を初めて装用されて『補聴器はうるさい』『補聴器の音に慣れない』とおっしゃる方が多くいらっしゃいますが、これはどうしてでしょうか?
人間の脳は、生まれてから色々な音や言葉を聞いて学習することで、脳の神経細胞が構成されて音声を認知できるようになります。長時間を経て進行した高域障害難聴の場合、内耳の高域を処理する部分が損傷して4,000Hz以上の信号は脳にほとんど伝わっていきません。信号がこない高域の神経細胞は失われいきます。
ところが、若干、聴力が残っている2,000Hz前後を処理する部分では、聴覚経路のダメージを補おうとする自然な働きが起こります。こうして聴力が失われると脳に届く情報はそれまでとは違う方法で組み立てられる(再構成)ようになります。この状態が強くなってから補聴器を装用しても脳が変化してしまっているので、すぐには適応できません。
初めて補聴器を装用する人の多くは以下の訴えをします。
・音が鋭く感じる。
・「新聞紙のガサガサ音」を不快に感じる。
・「食器類がガチャガチャいう音」を不快に感じる。
これは、周波数が高い音を受け取って処理する神経細胞が少なくなっているために、「意味のある音」ではなく、「単なる不快な雑音」と感じてしまうためです。長期にわたり難聴が進行した人は、神経細胞を再構成するまでに時間がかかります。これまでの研究によっておよそ3~4か月かかるといわれています。補聴器に慣れるまでの時間は、難聴になってから補聴器を着けていなかった期間が長いほど長くなります。このため、聴力低下を感じても補聴器装用をためらい、難聴が進んでからやっと着けた方がなかなか慣れることができず、周りのご家族やご友人も困っているのに補聴器を諦めてしまうといったことが起こります。そのような方が一人でも減るように、補聴器の早期装用をお勧めします。
※サラウンド・サウンドニュースNO,28・GNカレッジホームページより転載